「シェリー樽のウイスキー」
という言葉を聞いたことはないでしょうか?
スペインの名産”シェリーワイン”の樽で熟成させたウイスキーの事で、伝統的にウイスキーの熟成で使用されてきました。
シェリー樽のウイスキーは濃厚で複雑な香味で、モルトファンから支持されています。
また、ブレンデッドウイスキーの複雑みを与える大事な原酒となったり、「ウッドフィニッシュ」という後熟で深みが与えられたり……。
ウイスキーの熟成樽として重宝されているシェリー樽。
今回は、「シェリー樽」とシェリー樽熟成のウイスキーについてまとめていこうと思います。
シェリー系ウイスキーとは??
シェリー系ウイスキーとは、シェリー樽熟成のウイスキーのこと。
実は、シェリー樽の世界は奥が深いものです。
そんなシェリー樽の世界を今回は覗いていこうと思います。
「シェリー酒」とは?
シェリー酒とは、スペインのアンダルシア地方で作られている酒精強化ワインというものの一つ。
酒精強化ワインとは、ワインにスピリッツなどを足して保存性を高めたワインのことです。
シェリー樽のほかには……
- ポートワイン
- マデイラ
- マルサラ
など
これらの酒精強化ワインも、ウイスキーの熟成に使われることがありますが、シェリー樽が使用されることの方が多いです。
まずはウイスキーラバーとして知っておきたいシェリーの基本から紹介していこうと思います。
シェリー酒を知る3×3のポイント
シェリー酒には覚えておきたい3つの「3」があります。
一つずつ紹介させていただきます。
1つ目 3つの生産都市
- へレス
- サンタマリア
- サンルーカル
シェリー酒で覚えておきたいシェリー酒を作っている3つの都市です。
シェリー酒はこの3つの都市を中心とする地域の白ブドウが使用されていて、熟成もこの3つの都市のボテガ(醸造所であり、熟成庫)で行わないといけません。
この3つの都市以外で同じ製法のワインを作っても、原則「シェリー」と名乗ることはできません。
このような厳しいルールがあります。
`2つ目 3つの品種
シェリー酒に使われる白ブドウの品種には3種類あります。
- パロミノ種
- ペドロヒメネス種
- モスカテル種
このうちパロミノ種がシェリー酒全体の約95%ほどの割合を占めています。
5%弱ぐらいの割合で「ペドロヒメネス(PXを略される。)」、1%満たないぐらいの割合で「モスカテル」です。
ペドロヒメネスとモスカテルは、そのままシェリーの種類名にもなっています。
ペドロヒメネスとモスカテルはまるで蜜のような甘みが特徴。甘すぎてびっくりするかも!
3つ目 パロミノからできる3つの種類
- フィノ
- アモンティリチャード
- オロロソ
- フィノは辛口タイプ
- アモンティリチャードはフィノの酸化熟成タイプ
- オロロソは酸化熟成タイプ
……
シェリー酒は産膜酵母という酵母菌が大きく仕上がり、味わいを左右します。
産膜酵母はフロールという膜を作る性質のある酵母。
この酵母はフロールを作る性質がありますが、アルコール発酵はしないそうです。
酵母の世界も奥が深いですね。
この膜ができると酸化熟成はされませんが、できないと酸化熟成が進みオロロソとなります。
膜ができるかできないかは、熟成前のアルコール度数がポイントです。
アルコール度数15%程度に上げたものは、フロールが生成されるためフィノとなります。
対してオロロソは17~18%までアルコール度数を上げたもので、フロールができず酸化熟成が進みます。
そしてアモンティリチャードは始めはフィノと同じですがフロールが消えたことで、途中でアルコールを添加し酸化熟成を促したものだそうです。
また、サンルーカルで作られるフィノタイプのシェリーだけは「マンサニージャ」と呼ばれています。
シェリー樽とは??
シェリー樽とは、シェリー酒の熟成に使われた樽ではありません!!!
シェリーはソレラシステムという熟成方法を採用しています。
ソレラシステムとは、簡単にまとめると継ぎ足し方式と説明できるでしょう。
3~5段積み上げた樽から製品として抜くのは一番下の樽だけで、1/3以上は抜きません。
そしてその一番下の樽から抜いた分はその一つ上の樽から補充、補充した樽はさらに上の樽から補充……
このように補充していき、最後に一番上に新しいものを補充するというシステム。
こうすることで、味の均一化ができ品質も安定するそうです。
グレンフィディック 15年 ソレラリザーブなどウイスキーでもソレラシステムを採用している銘柄があります。
つねに補充し続けているので、基本的にシェリーの熟成に使われている樽は空くことがありません。
中には100年ぐらい使われている樽もあるそうです。
ちなみにシェリー熟成用の樽はホワイトオーク材がほとんどです。
ところが、ウイスキーで使われているシェリー樽といえばヨーロピアンオーク材がよく使われています。
実は、シェリー熟成用の樽とウイスキーの熟成に使われるシェリー樽は別物なのです。
シェリー樽とは、もともと「シェリー運搬用の樽」でした。
スペインからイギリスへシェリーを運ぶために詰めていた樽でワンウェイ樽のため、スペインへ戻ってくることはありません。
このワンウェイ樽であることが、ウイスキーの熟成でシェリー樽が使われるようになったポイントとなります。
スコッチの歴史はシェリー樽にあり
イギリスはシェリー酒の主要消費国であり、昔からシェリーワインが好まれてきました。
イギリスではワインが作れなかったことが好まれた要因ともいえるでしょう。
イギリスで、ワインを飲むためには輸入に頼るしかありませんでした。
輸送中に劣化しにくい酒精強化ワインは、絶大な人気となるのは目に見えてわかると思います。
そしてイギリスの港には、シェリー酒運搬用のワンウェイ樽がいっぱいあったといわれています。
当時スコットランドを中心にウイスキーへ重課税が課せられていた時代。
多くの蒸留所は密造を行っていました。
密造したら、作ったウイスキーを隠す必要がありました。
その作ったウイスキーを隠すために、港にいっぱい転がっていたシェリー運搬用の樽に詰めて隠していたそうです。
当時のウイスキーに熟成の概念はなかったといわれています。
ただ、こうして樽に詰めて長い時間がたち、密造していたウイスキーを飲もうと開けてみたら……
なんと琥珀色のかぐわしい香りを持つお酒に変貌していたそうです。
これがウイスキーに熟成の概念が生まれたと言われています。
今のシェリー樽はほとんどシーズニング??
シェリー運搬用の樽が「シェリー樽」!!
実は、これは過去の話なのです。。
今シェリー酒を樽で運搬することができなくなりました。
スペインの法改正でシェリー酒を樽で運搬することが全面禁止となったため、
ウイスキーで使えるシェリー樽が手に入らなくなってしまいました。
シェリー樽が入手できなくなってしまったウイスキー蒸留所。
自分たちで用意した樽や依頼した樽をボテガにおいてもらい、シェリー酒を詰めてシーズニングを行うようになります。
多くはオロロソでシーズニングを行うそうですが、ボテガによってはオロロソになる前の酒精強化した状態のワインを詰めることもあるそう。
さらにこのウイスキー用に使われる樽はもちろん新樽。
オロロソを詰めたとしても、この樽で寝かせたお酒は「オロロソシェリー酒」とは呼べない代物となってしまいます。
そのため、「熟成」という言葉は使わないそうです。
ちなみにこのシーズニングに使われたシェリー酒は、蒸留し酒精強化用のスピリッツに使われることが多いそうです。
おすすめのシェリー系ウイスキー
最後に僕がおすすめしたいシェリー樽のウイスキーについてまとめてみました。
シェリー樽熟成のエキスパート 3銘柄
ジャンル | シングルモルト |
---|---|
生産国 | スコットランド・スペイサイド |
アルコール度数 | 43% |
樽 | シェリー樽 |
熟成年数 | 12年 |
「12年シングルモルトの理想形」といわれるボトルで、グレンファークラスのラインナップの中では最も人気のある銘柄です。
リッチでバランスの取れた味わいにドライフルーツのような芳醇なフルーティさが特徴。
シェリー樽のニュアンスが表れており、シェリー系ウイスキー入門ボトルとしても最適です。
- シェリー樽のみの熟成にこだわっている。
- 比較的クオリティの高いシェリー樽熟成のウイスキーをリリースしている。
ジャンル | シングルモルト |
---|---|
生産国 | スコットランド・ハイランド |
アルコール度数 | 43% |
樽 | シェリー樽 |
熟成年数 | 12年 |
1826年に創業した歴史のあるグレンドロナック蒸留所のフラグシップボトル。
シェリー樽熟成のエキスパートとも言われている蒸留所で、12年に使用されている原酒はすべてシェリー樽熟成です。
厳選された辛口シェリー樽と甘口シェリー樽が使用しております。
アンバーの深い色合いにナッツやドライフルーツのような甘く芳醇な味わいが特徴。
樽のニュアンスがよく出たシェリー系ウイスキー入門の一本です。
- バランスのいいシェリー樽ウイスキーをリリースしている
- 18年・21年もおすすめ。
- 深いコクのあるフレーバー
- シェリー樽の特徴がわかる
- オフフレーバーが気になる
- 価格が高い
- シェリー樽熟成のスコッチといえばこのウイスキー。
- ブランド力が特に強い銘柄。
シェリー樽にこだわる銘柄
- 複雑だがバランスがいい
- ハイボールからストレートまで飲み方を選ばない
- ややサルファ(硫黄系フレーバー)が気になる
- シェリー樽熟成にこだわっているが、ソルティさやフルーツ香なども楽しめる。
- バランスが良く飲み方を選ばない。
- バランスのいいシェリー樽のニュアンスが楽しめる
- シェリー樽比率高めの印象だが、ゴム臭があまり感じない
- 最近手に入りにくい
- シェリー樽熟成にこだわりつつも、バーボン樽でバランスをとっている。
- 濃厚さとフレッシュさの塩梅が絶妙。
- シェリー樽のふくよかさが楽しめる
- シェリー樽由来のゴム臭をやや感じる
- シェリー樽以外にも酒精強化ワイン系の樽で熟成されたウイスキーが多い
- チョコレートのような濃厚さとミントの爽やかさも感じるウイスキー。
最後に……
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回のお話いかがだったでしょうか??
シェリー樽のウイスキーって結構濃厚で深い味わいのものが多いです!
まったり楽しめるリッチな味わいのシェリー系ウイスキー。
濃厚な晩酌をシェリー系ウイスキーで楽しんでみてはいかがでしょうか??
それでは良いウイスキーライフを!!
また次回もよろしくお願いします!!