ローランドモルトとは?スコットランドの中で今最もアツいローランドについて徹底解説

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本日もお越し頂きありがとうございます。

ウイスキーを愛する料理人Yaffeeです。 (@TW0GPYU3yMS7N3o

 

今回のお話は「スコッチの生産区分『ローランド』」について

スコッチモルトウイスキーには現在6つの生産区分があります。

スコッチウイスキーの生産区分

 

この6つの中で、今回はローランドモルトについて見ていこうと思います。

目次

「ローランド」とは?

ローランドとは、スコットランドの中でもイングランドに近い地域のこと

スコットランド本土は大きくハイランドとローランドに分かれます。

ただその境界線はあいまいです。

 

行政的な区別とウイスキーなど産業的な区別、地形的な区別など必ずしも一致せず、資料によってその境界線は大きく変わります。

ただウイスキーの場合、東のダンディーと西のグリーノックをつなぐ線の北がハイランド、南がローランドといわれています

 

そのハイランドとローランドの名称の違いは、地図上で見てハイランドの方が上に来るからではありません。

 

ハイランドは、山々の連なる山岳地帯で、険しい地形が多いそうです。

対してローランドは、平坦な丘陵地帯が多く人口が集中スコットランドの産業の中心地となっています。

 

スコットランドの首都”エジンバラ”も最大の都市”グラスゴー”もスコットランドのローランドにあります。

そしてもともとローランドはスコッチウイスキーの産地として有名でした。その昔、40近くの蒸留所があったともいわれています

 

しかし、大きく衰退。

一時は、2つの蒸留所しか稼働していないという事態まで陥ってしまいました。

 

ところが、現在多くのクラフト蒸留所が建設。

20か所以上の蒸留所がある地域となっています。

 

なぜ、ローランドモルトは衰退し、どうやって復活していったのか。

ローランドモルトとはに触れつつ解説していこうと思います。

 

「ローランドモルト」とは?

ローランドモルトとは、スコットランド・ローランド地区で作られているモルトウイスキーのことです。

この地域は、今現在新しい蒸留所ができているものの、少し前までは3つの蒸留所しか稼働していない状態でした。

  1. オーヘントッシャン
  2. グレンキンチー
  3. ブラッドノック

 

もともとローランドはハイランド地域と覇権を争うほど蒸留所が多く、ウイスキーもたくさん作っていました。

ただ当時から、ハイランドモルトとローランドモルトの境界線はあいまい。

境界に近い蒸留所では、ローランドに位置する蒸留所がハイランドと名乗っていたり、ハイランドに位置していた蒸留所がローランドと名乗っていたり……

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ハイランドはスコットランドのモルトウイスキーづくりにこだわる職人が多く、対してローランドは税金の面で優遇されていたそうです。

 

各々蒸留所の都合で境界線を変え、勝手に名乗っていた時代もあったそうです。

そんなローランドモルトとは、どういった特徴のあるウイスキーなのでしょうか?

ローランドモルトの特徴

ローランドモルトの特徴は、個性が穏やかで飲みやすいということ。

そしてモルティ(穀物感)のあるタイプが多く、酒質もライトで繊細な傾向があります。

 

その理由は、スコットランド・ローランドのウイスキーづくりは3回蒸留を行うことが伝統だからです。

スコットランドのウイスキーづくりは基本的に2回蒸留で作られています。

 

蒸留回数が増えるほど、酒質は軽く個性が穏やかとなる傾向があります

そのため、蒸留回数が1回多いローランドモルトは、ほかの生産区分よりライトとなりやすいです。

 

ただ現在3回蒸留を行っているローランドの蒸留所は、オーヘントッシャンのみ。

最近復活したローズバンク(「ローランドの王」といわれた幻のウイスキー)は、ローランド伝統の3回蒸留で作るといっているので、本格的に復活したらオーヘントッシャンとローズバンクのみです。

 

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そのため、スコットランド・ローランドモルトの特徴を知りたかったら、オーヘントッシャンをお勧めします!

ローランドのウイスキーの歴史

ローランドはもともとウイスキーづくりで盛んな地域でした。

その理由は、イングランドに近かったからです。

 

当時からブリテン島で最も栄えていたのはイングランド。

そしてウイスキーもイングランドで消費されることも多かったといわれています。

 

ハイランド地区ではイングランドから遠くそして流通の便も悪かったです。

多くの蒸溜家たちはローランドでウイスキーを作り、イングランドに売りに行っていました。

そのためローランドモルトは、クセを好むスコットランド向けのウイスキーより、個性が穏やかで繊細なライトタイプのウイスキーを作っていました。

この時のウイスキーといえば「アイリッシュウイスキー」。

当時は、クセのあるヘビーなスコッチよりライトで飲みやすいアイリッシュが好まれていました。

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もしかしたら、
イングランドなどではライトなアイリッシュに近いウイスキーが受ける
と考えたうえで、アイリッシュに近い3回蒸留にこだわったのかもしれませんね。

 

1707年にスコットランドがイングランドに併合。そしてスコットランドのウイスキーに重税が課せられることとなります。

多くの蒸留家たちは、ウイスキーを密造し始めるようになります。

 

こうして始まったのが「ウイスキーの密造時代」。

 

ローランドでウイスキーを作っていた人たちはハイランドへ逃れ、山奥の隠れた地域や島々で作るようになります

その中で密造のしやすさとウイスキーづくりに適していた地域がスペイサイドとアイラ島でした。

 

この二つの地域には数多くの密造所ができ、多くのウイスキーが作られるようになりました。

ただ、ローランドからハイランド各地へ移住。密造を始めたのは、単に「重税を逃れるため」だけではありませんでした

 

当時、スコットランドは独立戦争に敗北。イングランドからの抑圧がひどい状態でした。

伝統文化のバグパイプの演奏やキルトの着用は禁止。ウイスキーへの重税。……

ほかにも、ここでは書けないようなひどい弾圧が行われていたといわれています。

 

そんなイングランドとイングランドへ頭を下げるスコットランド中央政府への反抗心からウイスキーを密造していたといわれています。

 

ところが、ローランドは比較的優遇されていたそう。

ハイランドとローランドでは収税システムが違い、ローランドの税金は少なかったそうです。

 

そのため、ローランドでウイスキーを作っていた蒸留所もありました。

ただ1823年、酒税法改正により蒸留所のライセンス料が引き下げられると、ハイランドとローランドの税の優遇はなくなりました

そこからローランドのモルトウイスキーはどんどん衰退していきます。

 

そんなローランドが密造時代からハイランドに対抗するために力を入れてたのが「グレーンウイスキー」。

 

当時ローランドでは、税金が優遇されていたとはいえ高いことには変わりありません。

そこで、モルト使用量を減らしたグレーンウイスキーを作り始めました。

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当時、イングランドには「モルト税」というのがありました。
そのため、モルト使用量を減らせば税金を減らすことができるというわけです。

ただグレーンウイスキーは、単体では個性が乏しく人気がありませんでした。

当時はそれよりハイランドのモルトウイスキー、そしてハイランドのモルトウイスキーより人気だったのがアイリッシュウイスキーでした。

 

グレーン蒸留所の多くは、そのままニュートラルスピリッツを生成。

そのニュートラルスピリッツはイングランドでジン用の原料に使われていたそうです。

 

ウイスキーの密造時代も終わり多くの蒸留所が公認蒸留所となっていくと、そのグレーンウイスキーとモルトウイスキーをブレンド

ブレンデッドウイスキーが誕生します。

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ちょうどこのぐらいの時期に連続式蒸留機が実用化されていきます。
それにより、グレーンウイスキーは大量生産できるようになり、より個性をなくしたニュートラルなお酒へと変貌していきました。

 

この飲みやすさと個性が楽しめるスコッチブレンデッドウイスキーが大人気となり、時代も味方して蒸留酒の王様としての地位を確立していきます

 

1886年にスコットランド蒸留所を訪れ、まとめたアルフレッド・バーナードの「The Whisky of the United Kingdom」ではローランドには37の蒸留所があったそう。

その3分の1は、グレーンウイスキー蒸留所だったそうです。

 

ハイランドで作られたモルトウイスキーが、ローランドへ運ばれグレーンウイスキーとブレンド、ブレンデッドウイスキーとして世界へ出荷されていく。

このような構図が誕生していきます。

 

2000年に入るころには、ローランドのモルトウイスキーは大きく衰退。

常に稼働している蒸留所はオーヘントッシャンとグレンキンチーのみとなってしまいました。

モルトいスキーが衰退していった理由は、

  • ハイランドモルトやアイラモルトのような個性がなく、淘汰されていった。
  • ブレンデッドウイスキー人気が高く、グレーンウイスキーの蒸留に乗りだす蒸留所が多くなった。
  • そもそも産業革命の影響でウイスキーを作ることをやめた

など。

そして、グレーンウイスキーも連続式蒸留機の性能がどんどん向上、大量生産が可能となり、系列の蒸留所は一か所に集約されていきます。

 

こうしてスコットランド・ローランドには、どんどんウイスキー蒸留所が減っていきました。

一時期は16か所のグレーン蒸留所がありましたが、現在は2010年に誕生した「スターロー蒸留所」も併せて5か所となっています。

 

ところが、2010年にローランドのウイスキーづくりに追い風が吹き始めます。

南ハイランドに誕生したストラスアーン蒸留所のトニー・リーマン・クラーク氏を中心としたクラフト蒸留所協会

同協会が、イギリス関税当局が今まで認めさせなかった2000リットル以下のスチルを認めさせました

 

今までスチルのサイズがネックでしたが、それが解消。

多くのクラフト蒸留所ができるようになります。中でも顕著なのがスコットランド・ローランドです。

現在、蒸留所は17か所となっています。

 

  ローランド
 1 Aberargie ザパース・ディスティリング 2017 モルト
 2 Ailsa Bay ウィリアムグラント&サンズ 2007 モルト
 3 Annandale デイビッド・トムソン 2014 モルト
 4 Auchentoshan ビームサントリー 1823 モルト
 5 Bladnoch ブラッドノックディスティラリー 1817 モルト
 6 Borders ザ・スリースティルズカンパニー 2017 モルト
 7 Clydeside モリソングラスゴー 2017 モルト
 8 Daftmill フランシスカ・カスバート 2005 モルト
 9 Eden Mill エデン・ブリュワリー 2014 モルト
 10 Glen Kinchie ディアジオ 1837 モルト
 11 Glasgow ザ・グラスゴー・ディスティラリー 2014 モルト
 12 Holyrood 2019 モルト
 13 Inchdainie ジョン・フォーガス 2015 モルト
 14 Kingsbarns 2014 モルト
 15 Lindores Abbey ドリューマッケンジースミス 2017 モルト
 16 Lochlea 2015 モルト
 17 Rose Bank イアン・マクロード 2020 モルト
 18 Cameronbridge ディアジオ 1824 グレーン
 19 Strathclyde ペルノリカール 1928 グレーン
 20 Girvan ウィリアムグラント&サンズ 1964 グレーン
 21 Starlow ラ・マルケニケーズ 2010 グレーン
 22 North British エドリントングループ 1887 グレーン

 

また位置的にイングランドに近く、訪れやすいこと・出荷しやすいことから多くのクラフト蒸留所が作られています。

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今後、スコッチクラフトウイスキーの中心地となっていくかもしれませんね。

おすすめのローランドモルト

ローランドモルトは、まだまだ復活している最中。

そのため、シングルモルトとして入手できるウイスキーはまだまだ少ないです。

 

ということで、ぼくが特にお勧めしたい3つの蒸留所からご紹介しようと思います。

オーヘントッシャン蒸留所

 

オーヘントッシャン蒸留所は、スコットランド・ローランド伝統の3回蒸留を今でも守っている蒸留所です。

世界大戦で大きな被害を受けましたが、見事復活を遂げました。

 

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グレンキンチー蒸留所

 

グレンキンチーは、世界最大のウイスキー企業「ディアジオ社」が持っているローランドの蒸留所。

同社がリリースしている各生産区分ごと代表をまとめた「クラシックモルト・シリーズ」のローランド代表となっています。

 

グレンキンチーはジョニーウォーカーの重要な原酒の一つともなっています。

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ブラッドノック蒸留所

 

この蒸留所は、スコットランドの蒸留所の中でも最もオーナーが変わった蒸留所といわれています。

その回数なんと10回!!

1817年に誕生してから、オーナーが10回も変わりました。

 

そのたびに閉鎖と再開を繰り返した蒸留所で、古いボトルなどはかなりレアなものが多いです。

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最後に……

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

今回のお話いかがだったでしょうか?

 

スコットランドの生産区分の中でもあまり注目されることの少ないローランドモルト。

スペイサイドやアイラモルトのようにわかりやすい個性がない分、違いを見つけるのが難しいと思いますが、全体的にはライトで繊細なフレーバーが特徴です。

 

ただオーヘントッシャンやブラッドノックのように面白いフレーバーを持っているウイスキーも多いです。

そのため、ほかの生産区分のモルトウイスキーと飲み比べてみるといい発見ができるかと思います。

 

それではよいウイスキーライフを!!

また次回もよろしくお願いいたします!!

 

 

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この記事を書いた人

香りづけに使用したことからウイスキーにどっぷり嵌ってしまった料理人です。
調理師の仕事をしつつ、ウイスキーと料理の魅力を紹介するためにブログ・メディアを作成。
様々な視点からウイスキーを解説しています。

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