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ウイスキーを愛する料理人yaffeeです!
今回のお話は
「100%ウイスキーじゃない、日本の地雷的なウイスキーとは?」
について
ウイスキー界で多くの人が使う言葉ではありませんが、一部から地雷的なヤバさを持つウイスキーに対して使われる言葉地雷ウイスキー
どういったウイスキーかというと、ひどいものだとウイスキーと呼べる原酒が1割しか入っていないウイスキーのことです。
「日本洋酒酒造組合」がジャパニーズウイスキーの自主基準を設けたことにより、これから数は減っていくと思います。
しかし、日本にはこれらを規制する法がないので、規制できないことも事実。
しかも、こういったウイスキーはウイスキー好きが買うような酒屋さんにはあまりおいていません。
ウイスキーを飲んでみようかなと思う初心者の方が買いやすいような大手スーパーに置いてあります。
ウイスキーをあまり知らない方が知らずに飲んでしまい、「ウイスキーっておいしくないね」といわれてしまうことは多々あります。
厄介なことにラベルからは初心者の方では見分けをつけることが難しいです。
そのためウイスキー自体に苦手意識を持ってしまうことも多くあると思います。
今回はそんな「地雷ウイスキー」を見分けるポイントをご紹介します。
ぜひ「地雷ウイスキー」を見分けて、いいウイスキーを楽しんでいただきたいです。
地雷ウイスキーとは?
地雷ウイスキーはいつからそう呼ばれているのかわかりませんが、あるウイスキーを分ける言葉として使われているようです。
そのウイスキーとは「実際には『ウイスキー』とは呼べない・疑問が残るウイスキー」のこと。
なぜ『ウイスキー』とは呼べないウイスキーというものがあるのか。
それには、日本の『ウイスキー』についての法律が関係しています。
日本でいう『ウイスキー』とは?
日本では、現在「ウイスキー」を定義する法律は酒税法しかありません。
そのため酒税法の定義を満たしていれば、「ウイスキー」と名乗ることができます。
ところが、その定義はほかのウイスキー主要国では「ウイスキー」だとは名乗ることのできないものも含まれてしまう定義なのです。
- 発芽させた穀類および水を原料に糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの。(95%未満で蒸留)
- 発芽させた穀類および水によって穀類を糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの。(95%未満で蒸留)
- 上記の2つの酒類にアルコール、スピリッツ、香味料、色素または水を加えたもの。ただしウイスキー原酒使用量は10%以上。
- 白樺の炭でろ過したものは除く
- 蒸留時にほかのスパイス・ハーブなどの香料の成分を浸出させたものは除く。
①はモルトウイスキーのことを指します。
ところが、「モルトウイスキー」との記載があるわけでもなく、発芽した穀類は必ずしも「大麦麦芽」である必要もありません。
まずモルトウイスキーをにおわせる記載があっても、その記載はあやふやなものとなっています。
そして②は「発芽させた穀類で穀類を糖化」させているのでグレーンウイスキ―のことを指します。
この2つに共通して言えることは、日本の「ウイスキー」の記載にウイスキーの品質にかかわる記載がほとんどないということ。
つまり、最悪熟成させなくても、蒸留器が違っても、原料に麹を使ってもウイスキーと呼ぶことができてしまいます。
そして、重要なのは③!!
つまり、ブレンデッドウイスキーの記載だと思います。
ウイスキー好きとしては恐ろしいことに10%でも「ウイスキー」と呼べる原酒が混ざっていれば日本の酒税法では「ウイスキー」と名乗れてしまうということです。
残りの約90%はスピリッツだったとしても、香味料や着色料でごまかしていたとしても「ウイスキー」です。
果たしてそれはちゃんとウイスキーの味・香りだといえるのでしょうか?
ハッキリ言って、スピリッツと香味料、カラメルなどの着色料の味ではないでしょうか?
もちろんおいしければいいと思います。
しかし、ウイスキーとしての「良さ」がほとんどない「ウイスキー」と呼ばれているお酒が「ウイスキー」として販売されています。
そこが現在の日本のウイスキーの闇です。
④はウォッカとの区別
⑤はジンとの区別のために記載されています。
なぜこんなに日本の「ウイスキー」の基準が甘いのか。
日本のウイスキーの基準は「酒税法」によって定められています。
なぜ酒税法にまとめられた「ウイスキー」の記載は甘いのでしょうか。
スコットランドやアメリカ、アイルランドのウイスキーの法律によってその定義が決められています。
ところが現在日本のウイスキーを定義する法律はありません。
酒税法はあくまでも課税を目的とするものです。
ウイスキーなどお酒を定義化するものではなく、ウイスキーの品質を守るための法律ではありません。
そのため、定義として甘いものとなっていて当然なのだと思います。
さらに言うと、あくまでも課税を目的とした酒税法なので、国産と外国産を分ける必要もないのです。
難しい問題だとは思いますが、スコットランドやアイルランド、アメリカなどとの一番の大きな違いは法律による定義がないことです。
ただ、もしウイスキーがビールのように「生ビール」「発泡酒」「第三のビール」といった税率の違いによる区分けがされれば現在なら変わってくるのかもしれないですね。
過去には、ウイスキーにも「特級」「1級」「2級」といった等級制度もありました。
「特級」で原酒が30%以上、「1級」でも原酒は20%以上、「2級」で10%以上。
等級によって税率が違いましたが、平成元年に廃止されています。
ウイスキーの税率について
お酒には、「酒税」というものがかかります。
そのお酒ごとの酒税を決めるために定められたものが「酒税法」。
その中でウイスキーの酒税はこのように記載されています。
品目 | アルコール度数 | 1㎘当たりの税 |
---|---|---|
ウイスキー ブランデー スピリッツ | 37%未満 | 37万円 |
37%以上 | 37%(37万円)より1%高くなるたび、1万円が加算されていく。 (例:40%なら40万円) |
アルコール度数37%までは一律37万円がかかります。
そして37%を超えると、1%ごとに加算されていくシステムとなっています。
つまり、アルコール度数37%だった場合、一本(700ml)当たり259円の酒税がかかることとなります。
そしてスコットランドやアメリカで定められているウイスキーの最低アルコール度数40%の場合……
1㎘で1%ごとに1万円ということは、1本(700ml)当たりで計算すると1%ごとに7円の税がかかり、40%だとすると280円も酒税がかかるということ。
そこにウイスキーを製造するのにかかった原価もかかってくるので、1000円以下でウイスキーを販売しようとしたら37%のアルコール度数にしないと利益が出ないですよね。
そしてウイスキーを水割りなどの発泡性のない酒類でアルコール度数13%未満で販売された場合、別の税率となります。
品目 | アルコール度数 | 1㎘当たりの税 |
---|---|---|
連続式蒸留焼酎 単式蒸留焼酎 ウイスキー ブランデー スピリッツ リキュール | 8%未満 | 8万円 |
8%以上13%未満 | 8%(8万円)より1%高くなるたび、1万円が加算されていく。 |
発泡性のある場合は、1㎘当たり8万円の税がかかるようです。
日本のウイスキーの成分表示について
ウイスキーの成分表示は基本、「モルト、グレーン」と書いてあります。
そして、アルコール度数37%程度の安い地雷ウイスキーには、「モルト、グレーン、スピリッツ」と書いてあることがあります。
これはどういったことなのでしょうか
「ウイスキーの表示に関する公正競争規約及び施行規則」を確認すると……
(引用:ウイスキーの表示に関する公正競争規約及び施行規則)
と記載されています。
つまり、穀物原料のブレンド用アルコールやスピリッツであれば、「スピリッツ」ではなく「モルト、グレーン」と記載することが可能です。
あくまでも、ウイスキーの成分表示に使われるスピリッツは穀物原料以外のスピリッツを使用した場合ということです!
そして、なんとシェリー酒を添加することが可能ということ。
しかも2.5%未満であれば原材料名に記載しなくてもいいこととなっています。
これは、もともとシェリー樽がウイスキーの熟成に使われていた歴史があり、その味わい再現するためにシェリー酒の添加が行われていたのだと思います。
ただ、ここには樽にしみ込ませたお酒の使用量などの記載はありません。
つまり、樽に別のお酒をなるべく多くしみ込ませて、ウイスキーを貯蔵しその成分を抽出することは可能であり、その分は原材料名に書く必要もないです。
ウイスキーの定義が法律化されていない分、日本のウイスキーでは自由度があるのかもしれません。
ただし、その抜け穴をついて地雷的なウイスキーをリリースしてしまっているメーカーも残念ながらあります。
それが日本のウイスキーの現状なのです。
地雷ウイスキーを見抜くポイント
- アルコール度数が37%
- 原材料名にスピリッツが添加されている
- ブレンデッドウイスキーであること
主に、この2つが「ウイスキー」と呼べない「ウイスキー」”地雷ウイスキー”を見分けるポイントとなっています。
こういったウイスキーはなるべく安く、そして利益率のいいウイスキーをリリースしたいと考えているはずです。
つまり、アルコール度数37%までは一律同じ税率で、それ以上だと加算されてしまうので37%にすることが多いです。
そして、モルト、グレーン(穀物原料のスピリッツを含む)だけでは原価が高くなってしまうのか、必ずスピリッツが添加されています。
主に廃糖蜜原料のスピリッツが使われることが多いそうです。
そしてそのすべてがブレンデッドウイスキーであること。
公正取引委員会・消費庁が認可する「ウイスキーの表示に関する公正競争規約、施行規則及び運用上の取扱い 」にシングルウイスキー、ピュアウイスキー、ストレートウイスキーに関する記載があります。
ただし、それも法の抜け道はあるのですが、この中でブレンデッドウイスキーが酒税法の記載されていること以外の記載はありません。
簡単に言うと……
- ストレートウイスキーはウイスキー原酒が100%であること。
- ピュアウイスキーはウイスキー原酒100%かつ単一原料であること。(例:ピュアモルト=モルト100%)
- シングルウイスキーウイスキー原酒100%かつ単一蒸留所であること。
ということです。
つまり、シングルモルト、シングルグレーンなどにスピリッツが混ざったものはないということです。
この中でスピリッツをブレンドすることができるのは「ブレンデッドウイスキー」だけとなります。
新しくできた「ジャパニーズウイスキー」の自主基準とは?
今回の「地雷的なウイスキー」だけでなく、酒税法でしか決まりのないジャパニーズウイスキー。
現在ほとんど海外産のウイスキーがブレンドされたジャパニーズウイスキーというもの問題となっています。
地雷ウイスキーのほとんども海外産のウイスキーがブレンドに使われていることが多く、国産の原酒は一滴も入っていないことも多いそう。
そんな現状が問題視され、ついに2020年にジャパニーズウイスキーを定義化する自主基準が誕生しました。
日本洋酒酒造組合という日本の洋酒製造を行っているメーカーのほとんどが加入している組合が決めた自主基準。
その内容は…
- 穀物類を原料、日本国内で採水された水を使用(モルトは絶対に使用)
- 糖化・発酵・蒸留を日本の蒸留所内で行うこと
- アルコール度数95%以下で蒸留
- 木製の樽で3年以上熟成させる。
- 40%以上でボトリング。
- 色の微調整のためのカラメル添加が可能
これにより少なくとも地雷的なウイスキーのことを「ジャパニーズウイスキー」や「国産ウイスキー」、「日本ウイスキー」などと名乗れなくなります。
このような定義がされただけでも大きな進歩だと思います。
定義がなかったからこそ自由な部分が多かったと思いますが、その分法の穴をすり抜け怪しいウイスキーを製造しているメーカーもあります。
これからどのようにジャパニーズウイスキーは進化していくのか、楽しみです。
最後に……
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回のお話いかがだったでしょうか。
ブラックニッカのように37%、スピリッツ添加のウイスキーでもハイボールでおいしいものはあります。
1000円以下で買えるというのも魅力の一つです。
個人的には、こういった地雷的なウイスキーは無くすことはできなくても……
- ビールの発泡酒や第3のビール
- みりんとみりん風調味料
のようにうまいすみ分けができるといいなと思います。