お菓子作りでよく使われるラム酒。
実は、ラム酒は南極大陸を除くすべての大陸で作られているお酒であり、4万以上もの銘柄があるといわれています。
各国独自のルールに基づいて作られているため、ラム酒の分類は無数と言えるほどです。
ところが、その分類も作り方・熟成度合・地域の特色から種類をあげるとそれぞれ3つずつほどに分けることができます。
この記事では、ラムの種類を探索し、ラムの魅力を紐解いていこうと思います。
ラム酒の分類
導入でも書かせていただいたように、ラムには大きく3つの分け方があります。
それは……
- 作り方による分け方
- 熟成期間による分け方
- 産地・系統による分け方
さらに、それぞれ3つずつ分類があります。
- 作り方による分け方
……トラディショナル、アグリコール、ハイモラセス - 熟成期間による分け方
……ホワイト、ゴールド、ダーク - 産地・系統による分け方
……フランス系、イギリス系、スペイン系(内陸、島もの)
それぞれに特徴に違いがあり、楽しみ方もそれぞれ変わってくるので、ラムの分類はラムの魅力を知るポイントです。
一つ一つ解説していこうと思います。
作り方による違い
ラムには主に3つの作り方があります。
それは……
- トラディショナル
- アグリコール
- ハイテストモラセス
トラディショナル製法は、砂糖の副産物である「糖蜜」から作られる方法です。
ラムのほとんどはこの製法で作られています。
対して、アグリコール製法とハイテストモラセス製法は、ごく一部の銘柄で採用されている方法です。
プレミアムブランド以外で作られることはほとんどないでしょう。
トラディショナル
糖蜜から作られるという一見複雑な作り方のように思えますが、ラムでは一般的な製法です。
さとうきびのしぼり汁のうち、結晶化するものが砂糖となり、結晶化しない糖蜜(モラセス)がどうしてもできてしまいます。
伝統的なラムでは、このモラセスを発酵、蒸留させてラムを作ります。
糖蜜は保存性が高く風味を保つことができるため、通年作れることができます。
また、糖蜜さえ仕入れることができれば、世界中どこでも作ることできることも特徴。
世界中で作られているラムの9割がトラディッショナル製法です。
- 通年作ることができる
- 世界中どこでも作ることができる
- ラムの9割はトラディショナル製法
アグリコール
サトウキビを絞った100%サトウキビジュースを発酵、蒸留してつくる製法です。
アグリコール製法は19世紀にフランスの植民地で確立した方法で、フランス海外県でよく作られています。
- マルティニーク
- グアドループ
- ギアナ
- レユニオン
当時、フランスが大陸封鎖したことや甜菜糖が発見されたことが重なり、砂糖が余ってしまったことからこの製法が行われるようになりました。
サトウキビのしぼり汁は、絞った瞬間から劣化してしまうため保存ができません。
アグリコール製法はサトウキビの収穫時期しか作れません。
また、蒸留所はサトウキビの産地である必要があります。
フレッシュなサトウキビジュースからラムを作るので、ややハーブなどの草っぽいフレーバーが特徴となっています。
特に熟成させていないホワイトラムだとアグリコール製法の特徴がわかりやすいので、ホワイト~ゴールドのアグリコールラムをお試しください。
- サトウキビのしぼり汁をそのまま発酵させて作られる
- サトウキビの産地である一部地域しか作ることができない
- ハーブなどの草っぽいフレーバーが特徴
ハイテストモラセス
ハイテストモラセス製法は、さとうきびジュースを煮詰めてから保管。
ラムを作るときに加水して発酵、蒸留を行う方法です。
トラディショナル製法に近い気もしますが、糖蜜は砂糖を取り除いたシロップに対して、ハイテストモラセスはサトウキビ100%のシロップです。
さとうきびの風味や味わいを損ねず、糖蜜と同じように冷蔵保存できるため1年中ラムが製造できます。
世界中どこでも作ることができるためトラディショナル製法とアグリコール製法のいい所取りをしたハイブリットと言えるでしょう。
この方法は「ロン・サカパ」が有名です。
- サトウキビ100%のシロップから作られる
- アグリコール製法のように原料由来の風味・個性が楽しめる
- トラディショナル製法のように通年・どこでも作ることができる
熟成度合による分け方
ウイスキーと違い、ラムには熟成させなていない状態で製品化されている銘柄も数多くあります。
そのためラムには熟成度合による大雑把な分け方があります。
- ホワイトラム
- ゴールドラム
- ダークラム
熟成度合の分け方は、見た目で判断できます。
ぜひ参考にしてみてください。
ホワイトラム
基本的に熟成をしていない無色透明なラム。
ラムのほとんどは、ホワイトラムとして楽しまれています。
一般的なブランドのホワイトラムは、クリアで軽い味わいでカクテルベースとして人気が高いです。
またアグリコールのホワイトラムでは、サトウキビ由来の風味を感じやすいのでストレートでも飲まれています。
また、「バカルディ スペリオール」のように一度樽熟成をしてから炭ろ過をしてホワイトラムにしている銘柄もあります。
バカルディ スペリオールは、バーやクラブにはほとんどと言ってもいいほど置いてある有名な銘柄ですね!人気の秘訣は熟成かも。
ゴールドラム
ゴールドラムは樽で2か月~3年未満熟成したラムのことを言います。
樽も内側を焦がしていない大樽かバーボンの空き樽を使うことが多く、樽由来の香りや味わいは控えめ。
ホワイトラムのように原料由来の風味が感じやすく、ほのかに熟成感もある味わいとなっています。
ダークラム
ダークラムは3年以上樽で熟成した、濃い琥珀色をしたラムのことを言います。
基本はバーボン樽が使用されますが、それ以外にもウイスキーカスクやコニャックカスク、シェリーカスクなど様々使われています。
深い樽の香りや芳醇な味わいが特徴です。
産地・系統による分け方
ラムの主要な生産地である西アフリカ、カリブの島々を含む中南米地域は、
- イギリス
- フランス
- スペイン
の植民地だった歴史があります。
どこの植民地だったかによって蒸留技術が異なり、味わいも変わってきます。
- フランス系ラム→コニャックなどブランデーの技術
- イギリス系ラム→ウイスキーの技術
- スペイン系ラム→シェリーブランデーの技術
自分好みのラムを探すときのヒントとなるのではないでしょうか。
イギリス系ラム Rum
骨格のしっかりとした深い味わいが特徴。
イギリス系ラムにはスコッチやアイリッシュウイスキーの蒸留技術だけでなく、ブレンド技術も踏襲しています。
単式蒸留器と連続式蒸留機で造られた原酒を使い、製品に合ったブレンドが行われることが多いです。
特に主な生産地はジャマイカとガイアナ。
ジャマイカラムで有めな「アプルトンエステート」は、21年熟成のものが2019年TWSCで最高金賞を受賞。
ガイアナラムで有名な「エルドラド」は多くにラムファンから支持されていたりと高評価なものが多いように感じます。
イギリス系ラムは、ウイスキーに精通する口当たりやニュアンスがあるのでウイスキーラバーにもおすすめです。
アプルトン
アプルトンは全体的に香りが豊かなのが特徴。
かなりコスパの味わいのものが多いです
エルドラド
プリンの底の濃厚なカラメル感が特徴。
「木製の単式蒸留器を使用」というモルト好きなら興味を持ってしまう蒸留方法を採用しています。
フランス系ラム Rhum
フランス系ラムにはコニャックの技術(ブランデー)が色濃く表れています。
アグリコール製法もその一つで、さとうきび本来の風味が感じやすいラムが多いです。
コニャックのような香り豊かで繊細な味わいが特徴。
生産者もサトウキビでブランデーを作っているという意識で製造しているため、V.S.O.PやX.Oといった等級表記を使うことがあります。
トロワ・リビエールV.S.O.P
自社農園に流れる3本の川からフランス語で「3つの川」の名前が付けられました。
V.S.O.Pのような熟成の進んだものは、
アグリコール独特の若草のような風味の残しつつ
ドライフルーツやチョコ、たばこ、はちみつのような芳醇で複雑な味わいが特徴。
多くのラムファンを魅了しています。
ラ・マニー
漫画版機動戦士ガンダムでシャア・アズナブルの「坊やだからさ」の名言の時に飲まれていたラム。
ラベルも赤が特徴的な『シャア専用ラム』です。
良質なダージリンのような味わいが心地いいです。
スペイン系ラム Ron
スペイン系ラムは、シェリーブランデーの技術を踏襲しているラムです。
シェリーブランデーはシェリーワインを蒸留して作られるブランデーで、フランスのブランデー造りより歴史が古いとも言われています。
同じスペイン系ラムでも島ものと大陸もので味わいが全然違います。
プエルト・リコやドミニカ共和国など島のものはキューバラムの影響を受け、ライトなラム(ロン・リヘロ)が多いです。
反対に大陸ものはシェリーブランデーの技術からボディが厚く、どっしりとした甘みが特徴です。
バカルディスペリオール
バカルディスペリオールは、ホワイトラムながら
1年間熟成させたゴールドラムをチャコールフィルターでろ過、
透明に戻すという製法を採用しています。
ほかのホワイトラムに比べて口当たりがよく、バランスの良さが特徴。
カクテルベースとして人気が高いですが、そのまま飲んでも十分楽しめるラムとだと思います。
ディプロマティコ
黒蜜や黒糖のようなどっしりとした甘みながら、
どこか和っぽいニュアンスも感じる極甘のラム。
初めて飲んだらこれが蒸留酒?てなるくらい甘いです。
わらび餅やきなこ棒、抹茶を使ったお菓子などと合わせると絶品です。
【例外】黒糖焼酎はラムの一種??
実は、ラムには明確な定義がありません。
一つ上げるとしたら「サトウキビ原料の蒸留酒」であることぐらいです。
実は、日本の黒糖焼酎もラムの一種に含めることができます。
日本でも昔からラムは作られていたのです。
東南アジア圏では古来よりサトウキビの蒸留酒が作られていたとも言われていて、今回挙げたラム以外にも多彩な種類があると言えるでしょう。
ラムは明確な縛りがない分、ウイスキーよりも多様性に富んでいて味わいの幅も広いです。
最後に……
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回のお話いかがだったでしょうか??
ラムには……
- 作り方による分け方
……トラディショナル、アグリコール、ハイモラセス - 熟成期間による分け方
……ホワイト、ゴールド、ダーク - 産地・系統による分け方
……フランス系、イギリス系、スペイン系(内陸、島もの)
といった分け方があり、そのそれぞれの特徴を今回は解説していきました。
ただ「黒糖焼酎」もラムの一種に数えることができるなど、ラムには明確な定義がない分世界中にさまざまな個性を持ったボトルがあります。
正直追いきれないほどにラムの種類は豊富です。
ぜひラムの深い深い世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか??
それではよい酒飲みライフを!!
また次回もよろしくお願いいたします!!
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