今回のお話は
「ウイスキーが最も長い時間を過ごす『ウエアハウス:熟成庫』とは??」
について!!
今回ウイスキーが最も長い時間を過ごす熟成庫について注目。
熟成庫の違いを比較しながら解説していこうと思います!!
ウイスキーの熟成庫の種類!!
ウイスキーの熟成庫には3つのタイプがあります。
- ダンネージ式
- ラック(オープンリック)式
- パラダイス(パレット)式
ダンネージ式は最も伝統的な熟成庫!!
スコットランドの老舗蒸留所は大体ダンネージ式ウエアハウスを持っています。
大してラック式は1950~60年代に生まれた方法。
パラダイス式はもっと後になってから採用され始めました。
ラック式はスコットランドや日本、アイルランドをはじめとして多くの地域で採用されている熟成庫のスタイル。
素子てパラダイス式は、カナディアンやアイルランドなどで多く見られる熟成庫です。
今回は、熟成庫の違いがどのような違いを生むのか、一つ一つメリット・デメリット上げながら解説していこうと思います!!
ダンネージ式ウエアハウスとは??
ウイスキーの本場スコットランドで多く見られる伝統的な熟成庫のスタイルです。
床に木のレールを直接敷き、樽を3~4段ほど積み重ねて熟成させるスタイルで、「輪木積み」とも呼ばれています。
熟成庫の建物自体は土の床に、石の壁で一階建てというのが特徴となっています。
ダンネージ式のメリット
- 長い熟成に向いている。
- 熟成のばらつきが比較的生まれにくい。
- 風土の特徴が表れやすい。
- 初期費用が比較的安い。
ダンネージ式最大の特徴は、湿度が高いこと!!
高湿度の中でウイスキーの熟成ができるので、長期間の熟成に向いているそうです。
また気候風土の特徴も表れやすく、3段までしか重ねないので、ほかのラック式やパラダイス式に比べて熟成のばらつきが出にくい傾向があります。
また、初期費用も安いそう。
そのため近年できている新勢力のクラフト蒸留所では、初めにダンネージ式を採用。
資金調達ができるようになったら、ラック式を併用といった流れが多いそうです。
ダンネージ式のデメリット
- 広い土地・スペースが必要になってくる。
- 熟成が遅いので、短期熟成には向いていない。
ダンネージ式には、広いスペースが必要となってきます。
そうでなくても、ダンネージ式に向いている土地・向いていない土地があるそう。
そのため、ダンネージ式だけで大規模生産をしようとすると、スペース確保の問題ができてます。
また短期熟成には比較的向いていない傾向があるという話もあります。
ダンネージ式で、短期間で程よい熟成感を得ることは難しいそうです。
現にスコットランドに比べて短期間で熟成させるバーボンや暖かい地域での熟成はラック式がほとんどとなっています。
ダンネージ式で有名な蒸留所
余市蒸留所は、伝統的なスコッチの製法に忠実な蒸留所の一つ。
今では、スコットランドですら行っていない、石炭直火での蒸留も行っています!
そんな余市蒸留所は、ダンネージ式の熟成庫にもこだわりを持っています。
ぜひ蒸留所見学の際には、見てみてはいかがでしょうか??
ラック(オープンリック)式ウエアハウスとは??
ラック式は鉄製のラックにウイスキーの樽を並べて熟成させる方法。
基本的に数段から十数段の高層の熟成庫となっています。
1950~60年代に採用され始め、今ではダンネージ式よりラック式の方が主流としている蒸留所も多いです。
ただその特性は大きく異なるので、多くの蒸留所はダンネージ式とラック式を使い分けています。
またオープンリック式はアメリカンウイスキー、特にテネシーやバーボンでほとんどの蒸留所が採用している熟成方法。
内容はラック式とほとんど同じです。
ただ棚の骨組みが木材となっていて、3~5樽ぐらいを重ねた棚の入った層が7層ある高層式の熟成庫となっています。
ラック(オープンリック)式のメリット
- スペースを少なくすることができる。
- 上層部と下層部で熟成具合が変わるので、ラック式だけでも原酒の作りわけができる。
- ダンネージ式より熟成を早くさせることができる。
- ダンネージ式より樽の入れ替えなどの管理がしやすい。
ラック式は、ダンネージ式に比べて圧倒的に省スペース化ができます。
そのため、多くの蒸留所が採用している方法。大規模生産をしている蒸留所は必ず持っている熟成庫です。
さらに高層のラック式では、上を下とでは熟成の状態や仕方が変わってきます。
上にはアルコール蒸気がたまりやすく、下には蒸散した水分がたまりやすくなります。
下層の樽での熟成はアルコール度数が下がっていく熟成となり、上層の樽での熟成はアルコール度数が上がっていく傾向があります。
また上層の方が高温になりやすいので、短期間で熟成感のある原酒が作れることも多いそうです。
さらに樽をラックに並べているので、樽の出し入れもダンネージ式より楽だそう。
上層・下層での熟成の差を作りたくない蒸留所は頻繁に樽をローテーションさせています。
ラック(オープンリック)式のデメリット
- ダンネージ式より熟成の均一性が難しい。
- 初期費用が掛かる。
ダンネージ式より熟成の均一化が難しい傾向があるそう。
ただその分様々な原酒ができるので、ブレンドの幅は広がるかもしれません。
ただ熟成ロスの面は、ダンネージ式より大きくなるかもしれませんね。
また高層の建物となるので、初期費用がダンネージ式より多くかかります。
そのため、多くの蒸留所ではダンネージ式と併用。熟成庫を使い分けているそうです!
超高層熟成庫で有名な日本の「富士御殿場蒸留所」
スコッチ・バーボン・カナディアンの技術を踏襲したキリンの富士御殿場蒸留所。
この蒸留所は圧巻の高層ラック式熟成庫が目玉となっています。
世界的に有名となった台湾の「カバラン蒸留所」
台湾から世界中を驚愕させた魅惑のモルトウイスキー『カバラン』。
そのカバランを作っているカバラン蒸留所は、高層ラック式の熟成庫がこだわりとなっています。
あえて機械での温度管理はせず亜熱帯気候の風を取り入れることで、スコットランドの何倍も早い熟成を可能にしました。
パラダイス(パレット)式ウエアハウスとは??
写真のように、パレット板に樽を縦置きに並べて熟成させる方法。
最近アイリッシュやカナディアンウイスキーを中心に多く採用されている熟成方法です。
パラダイス(パレット)式のメリット
- ラック式よりさらに省スペース化ができる。
- 初期費用が安い
- ラック式より熟成が早い傾向がある。
- ラック式より樽の入れ替えや管理が楽。
パラダイス式は、ラック式よりもさらに省スペース化とラックを入れる必要もないので初期費用が安いです。
またパレット板単位で樽を移動させられるので、樽の入れ替えがさらに楽になっています。
そのうえで、樽を縦置きにすることがこのパラダイス式の特徴!
樽を縦置きにすると、ウイスキーの熟成はより早く進む傾向があるといわれています。
パラダイス(パレット)式のデメリット
- 樽を縦置きするので、液漏れしやすく熟成ロスが大きい傾向がある。
- 耐震性に問題があるので、日本ではなかなか行うことができない。
- 長期熟成には向いていない。
樽を縦置きにすると熟成は早くなる傾向がありますが、その反面 液漏れしやすく熟成ロスが大きくなる傾向があります。
また耐震性に問題があるといわれていて、日本ではなかなか行うことができない方法そうです。
さらに、液漏れもしやすいので長期熟成には向いていない傾向があるそう。
スタンダードボトルで短期熟成のウイスキーを熟成させるには向いている熟成方法かもしれませんね。
日本のサントリーが所有するアイリッシュの「クーリー蒸留所」
パラダイス式はアイリッシュウイスキーに多い熟成方法で、サントリーが所有するアイルランドのクーリー蒸留所はパラダイス式の熟成庫で熟成させています。
最後に……
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回のお話いかがだったでしょうか
マニアックな内容でしたが、熟成庫に注目してウイスキーを見てみるとまた面白い発見ができると思います。
また、ウイスキー検定やウイスキーコニサーなどの資格を勉強するときに、深くウイスキーの熟成庫について知ってみるとより理解が深まります。
その他製造にまつわる知識はこちらから!!
ぜひウイスキーを傾けながら楽しんでいただけたらなと思います!!
それでは良いウイスキーライフを!
また次回もよろしくお願いします