カナディアンウイスキーというと多くの人がカナディアンクラブを思い浮かべるでしょう。
クリアですっきりしていているウイスキーで、居酒屋などにもよくおいてありますよね。
ただ、世界5大ウイスキーの一角であるカナディアンウイスキーには、「カナディアンクラブ」だけではありません。
合わせて読みたい⇨世界5大ウイスキーってなに??ウイスキー料理人がイラスト付きでマニアックに解説!
今回はカナディアンウイスキーの特徴から魅力、おすすめの飲み方まで徹底解説していこうと思います。
カナディアンウイスキーとは?
カナダで作られているカナディアンウイスキー。
日本でよく販売されているカナディアンウイスキーはカナディアンクラブぐらいで、あまりなじみはないかもしれません。
ところが世界的に見れば販売数は多く、世界5大ウイスキーの一つに数えられています。
- スコッチウイスキー
- アイリッシュウイスキー
- アメリカンウイスキー
- カナディアンウイスキー
- ジャパニーズウイスキー
まずは、カナディアンウイスキーとはどういったウイスキーなのか解説していきます。
カナディアンウイスキーの定義
- 穀物類を原料
- 酵母によって発酵
- カナダで蒸留すること
- 700ℓ以下の木樽で3年以上熟成させること
- 40%以上でボトリングされたもの
- 原酒をブレンドする際、9.09%以下であればカナダ産以外のお酒もOK
カナディアンウイスキーのユニークな点は、9.09%まで香味の添加ができるところです。
バーボンやスコッチウイスキーなどウイスキーだけでなく、ブランデーや酒精強化ワインなども加えられます。
またスコッチウイスキーやバーボンウイスキーのように樽の指定がないので、自由に樽を選ぶことができます。
- スコッチウイスキー⇨オーク製の樽
- バーボンウイスキー⇨内側を焦がしたオーク製の新樽
また、カナダでボトリングしなくてもカナディアンウイスキーと名乗ることができます。
例えば、カナダで蒸留された原酒をアメリカで熟成・ボトリングしたとしても「カナディアンウイスキー」です。
このようにスコッチに比べて許容されている部分が多いので、定義だけ見れば幅広いタイプのウイスキーが作れることが特徴だと思います。
カナディアンウイスキーの歴史
カナディアンウイスキーの始まりは、スコットランドやアイルランドからも移民から始まったといわれています。
アメリカ大陸の東海岸から移民が始まり、そこでウイスキー造りも行われるようになりました。
ところが、独立戦争後(1791年)にアメリカ連邦政府はウイスキーに課税をする政策をとります。
スコットランド移民やアイルランド移民はこの政策に反発、暴動が起きました。
独立戦争と同等の軍隊を派遣し、この暴動を鎮圧。
課税を嫌ったスコッチ・アイリッシュたちは、当時まだ「外国」だったケンタッキーやテネシーに移り住み、ウイスキーを作るようになりました。
これがのちにバーボンウイスキーとなっていきますが、この時ケンタッキー以外にもカナダに移り住んだ人たちもいます。
ケンタッキーやテネシーに移り住んだ人たちは、その土地の穀物”とうもろこし”を使ってウイスキーを作りました。
対して、カナダに移り住んだ人たちはモルトやライ麦を使ってウイスキーを作るようになりました。
ケンタッキーやテネシーに移住した人たちはアイルランド系が多く、カナダに移り住んだ人たちはスコットランド系が多かったといわれています。
そのため……
- バーボンは、アイリッシュと同じ「WHISKEY」
- カナダは、スコッチと同じ「WHISKY」
が多くなっています。
ぜひラベルを見比べてみてください。
そんなカナディアンウイスキーですが、世界的なウイスキーとなった経緯には、アメリカの禁酒法が大いに関係しています。
飲酒まで禁止とされたアメリカへの密輸やアメリカからの観光客によってカナディアンウイスキーはどんどん有名になっていきました。
この時暗躍したのが、かの有名な「アルカポネ」。
合わせて読みたい⇨アメリカの禁酒法(1920~33年)!!ウイスキーが受けた「影響」とは?
基本グレーンウイスキーであることが特徴
カナディアンウイスキーはクリアですっきりとした味わいが特徴。
グレーンウイスキ―の特徴と一致する部分が多いです。
それもそのはず、実はカナディアンウイスキーのほとんどは「グレーンウイスキ―」なのです。
合わせて読みたい⇨「グレーンウイスキー」とは? 個性が乏しいのは実は一部だけ!?魅力と特徴・作り方・おすすめの銘柄から解説
カナディアンウイスキーは、フレーバリングウイスキーとベースウイスキーの2つに分かれます。
そして、基本はこの2つをブレンドしたブレンデッドウイスキーです。
フレーバリングウイスキーは、ライ麦、とうもろこし、大麦麦芽、ライ麦芽などを原料に作られたウイスキー。
バーボンに違い連続式蒸留機が使われ、アメリカンウイスキーのバーボンやライウイスキーに近いヘビーさがあります。
対してベースウイスキーは、とうもろこしなどを原料に連続式蒸留機を使って高いアルコール度数で作られたウイスキーです。
ニュートラルスピリッツに近い軽いウイスキーとなっています。
多くのカナディアンウイスキーは、この二つをブレンドして作られる「カナディアンブレンデッドウイスキー」です。
ただ、もしスコットランドや日本でこのカナディアンウイスキーを作った場合、「シングルグレーンウイスキー」や「ブレンデッドグレーンウイスキー」となります。
つまり、軽やかでクセがないグレーンウイスキ―とカナディアンウイスキーは似ていて当然なのです。
魅力は飲みやすくてクセがないけど甘い
カナディアンウイスキーはライトなテイストのウイスキーが多く、クセがなくて飲みやすいことが特徴。
ただその中でも甘みを感じる銘柄が多く、ほのかな甘さがスコッチウイスキーが苦手な方や女性に人気の理由だと思います。
特にカナディアンウイスキーの長期熟成ものは口当たりがマイルドで甘い銘柄が多く、ウイスキーファンからも支持されています。
カナダは、オタワやトロント・モントリオールなど場所によっては、冬場は氷点下となることもあります。
ただ比較的湿度が高く、ウイスキーの熟成に適している土地と言えるでしょう。
熟成がゆっくり進むので、いい長期熟成の原酒ができるのだと思います。
短期熟成ものは、すっきりとしていてクリア・クセがなく飲みやすいといった特徴がありますが、
カナダの長期熟成ものは深みと甘み、まろやかさがありつつもどこかすっきりしている魅力があります。
バーボンウイスキーとの違い
カナディアンウイスキーはよくバーボンウイスキーと何が違うのか問われることがあります。
まず、味わいから製法まで全然違うのですが、今回は特に違う2つから解説しようと思います。
①.原料が違う
バーボンウイスキーは51%以上トウモロコシを使用しないといけないというルールがあります。
半分以上のとうもろこしが香りや味わいに与える影響は大きいです。
ところが、カナディアンウイスキーは原料の指定はありません。
穀物であれば、なんでもOKです。
そのため、ライ麦を多く使用したスパイシーな銘柄もあれば、原料由来の特徴が乏しい銘柄もあります。
②.樽が違う
バーボンは、「内側を焦がしたオーク製の新樽」の使用が義務です。
バーボン特有の力強い味わいはこの新樽から生まれます。
ところが、カナディアンウイスキーには使用する樽の指定は「木」であることのみ。
また、熟成期間3年間のうち、6か月以内であれば別の素材の容器に入れても熟成年数に加えることができます。
例えば、2年7か月を木樽(オーク製以外でもOK)でねかせ、残り5か月をステンレスタンクに入れたとしても3年熟成と言えるのです。
このように、バーボンは樽の個性を存分に出したウイスキーと言えます。
カナディアンウイスキーは樽の個性を極力出さないことも、個性を存分に出すことも作り手によって変えることができるのです。
カナディアンウイスキーのおすすめの飲み方
あくまでも僕の意見ですが、カナディアンウイスキーは短期熟成ものや熟成年数表記なしのものならハイボールや水割りがおすすめ。
長期熟成ものならストレートがおすすめです。
スッキリとしているので、飲み疲れず食前酒や食中酒としても楽しめることがカナディアンウイスキーの魅力だと思います。
特にハイボールや水割りなら繊細な日本食とも合わせやすいです。
寿司などと合わせてもいいですし、野菜や魚介の煮込みと合わせるのも乙だと思います。
また長期熟成ものならその深い魅力を存分に味わいたいですし、ストレートやトワイスアップでゆっくりと嗜むのがいいかなと思います。
おすすめのカナディアンウイスキー
僕が特におすすめのカナディアンウイスキーをご紹介していこうと思います。
カナディアンクラブ
ジャンル | ブレンデッドウイスキー |
---|---|
生産国 | カナダ |
アルコール度数 | 40% |
樽 | ‐ |
熟成年数 | ‐ |
『C.C』の愛称で親しまれており、日本で一番飲まれているカナディアンウイスキー。
カナディアンクラブは、個性の少ない「ベースウイスキー」とコクのある「フレーバリングウイスキー」蒸留直後にブレンドして熟成させる独特の製法(プレブレンディング)がポイント。
原酒同士がなじみやすく、よりまろやかな味わいになりやすいといわれています。
スムースでライトな味わいにやや穀物の甘みが特徴。
ハイボールにするとすっきりとした味わいに優しい甘みをお楽しみいただけます。
クラウンローヤル
ジャンル | ブレンデッドウイスキー |
---|---|
生産国 | カナダ |
アルコール度数 | 40% |
樽 | ‐ |
熟成年数 | ‐ |
クラウンローヤルは、1939年初めてカナダを訪問した英国国王”ジョージ6世”へ献上品として生まれました。
その後、プレミアムウイスキーとして少量生産されていましたが、今では世界No.1カナディアンウイスキーとして世界中で愛飲されています。
高貴な印象を求めたメープルのような甘みとコクのある味わいやスムースな口当たりが特徴です。
個性的でありながら、クセがなくバランスのいい味わいは「クラウン」の名に恥じない気品のあるお酒だと言えるでしょう。
カナディアンミスト
ジャンル | カナディアンウイスキー |
---|---|
生産国 | カナダ |
アルコール度数 | 40% |
樽 | ‐ |
熟成年数 | ‐ |
カナダのコリングウッド州にあるカナディアン・ミスト蒸留所で作られた良質なウイスキー。
口当たりがスムーズで軽快でまろやかな味わいが特長。
クセがなく親しみやすいウイスキーで、ハイボールからカクテルと幅広くお楽しみいただけます。
最後に……
冒頭でも書いたように、カナディアンウイスキーは日本に入ってくることが少ないウイスキーで、カナディアンクラブ以外知らないって方も多いと思います。
ウイスキー好きでもあまり知らない人は多いのではないでしょうか。
今回の記事がカナディアンウイスキーの知識や興味を深める記事となってくれたらいいなと思います。
ぜひ軽快でクセがないけど複雑さもあるカナディアンウイスキー。
今夜の晩酌に楽しんでみてはいかがでしょうか。
それではよいウイスキーライフを!
また次回もよろしくお願いいたします。
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