ウイスキーはアルコール度数が40%以上のお酒ですが、高級銘柄になるとよりアルコール度数が高くなる傾向があります。
アルコール度数が高い方が香味が豊かでまろやかなことが多いです。
その理由は、3つあります。
- 樽出しそのままに近い
- 冷却ろ過が必要なくなる
- 香り成分が豊富
「アルコール度数の高いほど、ウイスキーは美味しい。」
数多くのウイスキー銘柄を飲まれたことのある方は、よくこのような意見になることが多いです。
なぜアルコール度数が高くなるほど、美味しくなるのでしょうか?
今回は、その理由について詳しくまとめました。
ウイスキーのアルコール度数
ウイスキーのアルコール度数は40%以上です。
日本のウイスキーで一部アルコール度数37~39%の銘柄もありますが、世界基準では最低アルコール度数が40%となります。
上限は大体65%程度で70%を超えるウイスキー銘柄はありません。
他のお酒とアルコール度数を比較
他のお酒とも比較していきたいと思いますが、その前にお酒には3つの種類あることはご存知ですか??
- 糖分の含まれる液体を発酵して作られる『醸造酒』
- 醸造酒を蒸留して作られる『蒸留酒』
- 醸造酒や蒸留酒に糖分や香草、スパイスなどの香りをつけた『混成酒』
今回は、醸造酒と蒸留酒に絞って比較していきたいと思います。
醸造酒
ビール | 4~7% |
---|---|
マッコリ | 6~8% |
ワイン | 12~15%程度 |
日本酒 | 14~18%程度 |
紹興酒 | 16~18%程度 |
ちなみに世界一アルコール度数の高いビール「スモークヴェノム」は67.5%。
日本一アルコール度数の高い日本酒「越後武士(さむらい)」は46%です(酒税法上はリキュール扱い)。
蒸留酒
焼酎 | 25~35%程度 |
---|---|
ウイスキー | 40%~65%前後 |
ブレンデー | 40%~65%前後 |
ジン | 37%~57% |
ラム | 40%以上 |
テキーラ | 35~55% |
ウォッカ | 40%以上 |
テキーラ以外の蒸留酒は特にボトリング時の上限アルコール度数は定められていません。
ところが、高すぎるアルコール度数ではお酒の個性がなくアルコールしか感じなくなってしまいます。
そのため習慣的に上限アルコール度数が決まっているものが多いです。
ウイスキーやブランデーなど樽熟成がマストな蒸留酒は65%程度が上限となります。
ジンの最高アルコール度数の銘柄は、ピムリコジン、プリマスジン57°(アルコール度数57%)です。
ウォッカやラムの場合、アルコール度数90%以上の銘柄も作られています。
かの有名な世界一の度数のお酒「スピリタス」だね。
ウイスキーのアルコール度数
ウイスキーのアルコール度数は37%、40%、43%、46%、50%以上とこの5パターンであることが多いです。
37% | 日本の酒税法では37%まで一律税率。 37%を超えると1%ごとに税金が加算されます。 |
---|---|
40% | ウイスキー主要国で定められている「ウイスキー」の最低アルコール度数。 |
43% | 「エクスポートストレングス」と呼ばれる 国際市場で流通するスコッチウイスキーの伝統的な最低アルコール度数。 |
46% | 冷却ろ過の必要がなくなる最低アルコール度数。 |
50%以上 | カスクストレングス(樽出しそのまま)のことが多い。 |
なぜアルコール度数37%?
日本では、ウイスキーのアルコール度数が37%まで一律で1㎘あたり37万円(1本700mℓとしたら259円程度)の酒税が課せられています。
そしてアルコール度数37%以上の場合、1%上がるごとに1万円加算。
40%の場合は1㎘あたり40万円となり、1本(700mℓ)だと280円の税です。
37%は日本の酒税法上、もっとも低い税額でウイスキーを販売することができるアルコール度数となっています。
37%はスピリッツ添加の廉価な銘柄が多いよ。
中には、ウイスキーがほとんど入っていないものも……
度数が高いほど美味しい理由
樽出しそのままのウイスキーは、アルコール度数が50~65%程度です。
瓶詰するとき、ウイスキーはアルコール度数40%程度に加水されています。
アルコール度数の高い方が、樽熟成中のウイスキーに近い状態となるのです。
薄められてない方が美味しそうに感じるよね。
またアルコール度数46%以上になると冷却ろ過(チルフィルタリング)に必要がなくなります。
ウイスキーは低温で保管すると、見た目の品質が劣化してしまうことがあります。
- ウイスキーの白濁
- フロックという白い浮遊物
- 澱(おり)
冷却ろ過はウイスキーの品質を守るために必要ですが、アルコール度数46%以上では低温下でもフロックを形成することはありません。
白濁やフロック、澱となる成分はウイスキーの香味成分でもあります。
- 脂肪酸とそのエステル類(パルミチン酸エステルなど)
- β‐シトステロールとそのグリコシド
アルコール度数46%以上のウイスキーには、ウイスキー本来の香味がそのまま残っていると言えるでしょう。
一概にアルコール度数の高いお酒が美味しくなるわけではありません。
あくまでもアルコール度数はエタノールの濃度を示した数字なので、美味しさはお酒のポテンシャル・味わいに依存します。
ところが、価格の高い銘柄ほどアルコール度数は高い傾向があります。
アルコール度数が高い方が樽出しそのままのウイスキーの味わいを届けることができるのかもしれません。
ウイスキーのアルコール度数は高い理由
ウイスキーは蒸留酒の一種です。
「蒸留」とは、沸点の差を利用して混合液を分離する作業のこと。
お酒の蒸留の場合、水が100℃で蒸発するのに対してアルコールは78.3℃程度で蒸発していきます。
沸点 | |
---|---|
水 | 100℃ |
エタノール | 78.3℃ |
この温度差を利用して、水とエタノールを分離し、アルコール度数の高いお酒を造っているのです。
ウイスキーの蒸留上限アルコール度数は、スコットランドやアイルランドでは94.8%、バーボンウイスキーでは80%です。
上限アルコール度数 | |
---|---|
スコットランド、アイルランド | 94.8% |
バーボンやテネシーなど | 80% |
日本 | 95% |
高いアルコール度数で蒸留してしまうと、原料や発酵由来の香味がすべて取り除かれてしまいます。
そのため上限アルコール度数より低く蒸留するところがほとんどで、「ニューポット(蒸留直後の原酒)」のアルコール度数は65~70%程度です。
ブレンデッド用のグレーンウイスキー原酒ではクリアな酒質にするために高いアルコール度数で蒸留することもあるよ。
樽に詰めるときにアルコール度数63%前後に調節します。
その理由はアルコール度数63%が最も樽の成分を抽出できるからです。
熟成中、エタノールにより樽の成分が分解されてウイスキー中に溶けだしていきます。
適度に水分があると液中に溶けやすくなり、樽材成分が抽出されやすくなるといわれています。
地域によって熟成中にアルコール度数が上がることもありますが、必然的に65~70%ぐらいがアルコール度数の上限となるわけです。
温かいとアルコール度数が上がり、寒いとアルコール度数が下がるよ。
スコッチだとカスクストレングスで55~60%ぐらいだよ。
発酵もろみ | 7~8%程度 |
---|---|
蒸留後のニューポット | 65~70%程度 |
樽詰め時 | 63%前後 |
瓶詰め時 | 40~70%程度 |
飲み方別のアルコール度数
ウイスキーは高アルコールなお酒です。その分様々な飲み方をすることができます。
他にもミストやハーフロック、などがあります。
それぞれ飲み方別のアルコール度数(アルコール度数40%のウイスキーの場合)をまとめてみました。
ストレート | 40% |
---|---|
オン・ザ・ロック | 40%(氷が解けることで減少) |
ハイボール | 6~10%(氷が解けることで減少) |
水割り | 10%程度(氷が解けることで減少) |
ミスト | 40%(氷が解けることで減少) |
トワイスアップ | 20% |
ハーフロック | 20%(氷が解けることで減少) |
お湯割り | 10%程度 |
ハイボールや水割りならワインや日本酒より低いアルコール度数です。
ウイスキーはアルコール度数の高いお酒だからこそ玄人向きと思われがちですが、飲み方を変えればお酒の弱い方でもお楽しみいただけると思います。
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[…] 1樽のみを加水せず、チル・フィルターも書けずにボトリングしています。 […]