ウイスキーを芳しい香り放つ琥珀色の美酒に変えた「樽」。
今でこそ樽で熟成させるウイスキーですが、昔は無色透明の荒々しいまま飲まれていました。
樽熟成の始まりがウイスキーを大きく発展させたことは言わずと知れたことでしょう。
ウイスキーの樽にまつわる歴史には、ウイスキーの魅力がわかる深いロマンがあります。
そこで今回、樽の歴史について深くわかりやすく見ていこうと思います。
樽の歴史
いつ今の形の木樽が誕生したかは不明が、紀元前1000年以前古代バビロン人やエジプト人によって既にある程度作られていたとされています。
この頃には木造船が製造されており、木を曲げる加工が確立されていました。
木造船の製造、特に船底は、
- 木を曲げる
- 水が漏れない
この2つの技術が必要となります。
さらに木造船に用いられる木材はオークというブナの木です。
オークには、
- 頑丈
- 水に強い
- 腐りにくい
という性質があります。
木造船と樽には共通点があり、木造船の発達が、樽の発明につながったといっても過言ではないのではないです。
紀元前3世紀ごろ、ワインなどで粘土製の容器に変わって樽が使われるようになったといわれています。
そして、ローマからヨーロッパ中に樽が広まっていきました。
粘土製の容器に比べて、木樽は軽くて壊れにくいです。
木製の樽が実用化されたことにより、格段に運搬効率が上がったことでしょう。
ところが、当時の樽は今の樽の形より「桶」に近い形だったそうです。
今の樽の形を作ったのは、フランス西部森林地域に住んでいた遊牧のケルト人だといわれています。
鉄製のタガをはめ、強固な樽を作っていたそうです。
のちにケルト人は、グレートブリテン島そしてスコットランドやアイルランドへ移住。
そこで文明を築いていきます。
真ん中が膨れた樽の形には大きく3つの理由があります。
- 液体が漏れにくい堅牢さ
- 長い期間の貯蔵にも耐えられる強度
- 転がしやすく、運びやすい
などといった効果があります。
11世紀から13世紀の十字軍遠征時には、食料や飲料が樽に詰められ輸送されていたという記録があるそうです。
ところが、16世紀ぐらいまで「熟成」に使われることはあまりありませんでした。
初めて樽熟成が注目されたのは、16世紀にブランデーの輸送中に起きたミスからです。
16世紀末のある日、木樽に詰めたコニャック(ブランデー)が北米に船で運搬されました。
当時のブランデーにも熟成という概念はなく、無色透明の荒々しいお酒だったそうです。
無事北米に到着した輸送船。
ところが、積み荷のブランデーをおろし忘れるというミスを犯します。
そのまま、フランスに帰ってきたブランデー。
開けてみると、無色透明だったブランデーが琥珀色の芳しい香りの美酒へと変貌していました。
ここからコニャック・ブランデーが樽熟成されるようになったという説があります。
ただ、ワインではすでに樽熟成の技術が確立していたため、ワインからブランデーも熟成されるようになった説もあります。
ウイスキーで樽熟成が行われるようになるのはもっと後の話です。
熟成という概念が生まれる前のウイスキーも無色透明な荒々しいお酒でした。
その荒々しさをとるために、ドライフルーツやスパイスをつけたり、甘みを足したりしていたそうです。
18世紀になるとウイスキーへの酒税がかけられます。
ウイスキー蒸留所は、重税に苦しむこととなりました。
税金対策のためウイスキーを密造する流れが盛んとなり、俗にいうウイスキー密造酒時代の始まります。
この時ウイスキーを隠すために、当時イギリスで入手しやすかったシェリー輸送用の樽に詰められました。
イギリスは、今でもシェリー酒の一大消費国です。
当時、ワンウェイ樽に詰めて運搬されていたシェリー酒。
その空き樽が英国中の主要港に転がっていたといわれています。
密造家たちは、その樽に密造酒を詰めて隠していました。
シェリーの空き樽に隠していると……
無色透明だったウイスキーが、琥珀色の魅惑的な酒へと変貌していました。
ここからウイスキーの熟成が始まったといわれています。
ただ前記したようにブランデーではすでに熟成が行われていました。
もちろんイギリス上流階級には、熟成されたブランデーが飲まれていました。
そのため、熟成されたブランデーを知る人から熟成の概念が伝わったのではないかって説もあります。
密造酒を隠したら熟成された説は、支配されていたイングランドへの反抗心から語られることも多いです。
ウイスキーは、密造酒を隠すために樽に詰めたことが熟成の始まりとしてよく語られます。
ウイスキーが、何かのお酒に使っていた樽で熟成させることが多いのは、ここから来ているのかもしれません。
熟成されたウイスキーに人々は魅了され、徐々に樽熟成が義務となってきました。
ウイスキーの樽熟成の始まりは、樽やウイスキーの誕生に比べると歴史が浅いです。
ただその浅い歴史の中には、深いロマンやストーリーがあります。
最後に……
- イギリスの政治的背景
- ほかのお酒との関係
などなど。
特にお酒の歴史は、世界史と密接に絡んできます。
皮肉なことに、おいしいお酒ほど悲しい歴史に巻き込まれていることが多いです。
もしかしたら、そういった歴史があるからこそ人々を魅了するのかもしれません。
今回の記事でウイスキー樽の歴史からウイスキーの魅力がお伝えできたらいいなと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
また次回もよろしくお願いいたします!!
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